◆「健康増進法改正案」が提出見送りに
受動喫煙(他人が吸っているタバコの煙を吸わされてしまうこと)への対策を強化する健康増進法改正案について、通常国会では提出が見送られました。引き続き、成立に向けた調整が続けられる見込みです。
ここでは、受動喫煙を含む「職場における喫煙」の問題について、考えてみましょう。
 
◆職場の受動喫煙対策は努力義務
平成27年6月より、すべての事業者には、労働者の健康保持・増進のため、職場の受動喫煙防止対策を実施するよう、努力義務が課せられています(安衛法68条の2)。
対策の具体例としては、「屋外喫煙所の設置による屋内全面禁煙」や「喫煙室の設置」などが挙げられます。
これらの設置に必要な経費の半額を支給する「受動喫煙防止対策助成金」をはじめ、国による支援も実施されています。
 
◆職場で喫煙する人の割合とタバコ休憩の実態
もちろん、受動喫煙防止対策が必要なのは、職場で喫煙する習慣のある人を多く雇用している会社です。そもそも自社に喫煙者がどのくらい在籍しているのか、把握できているでしょうか。
ちなみに、厚生労働省「労働者健康状況調査」によれば、職場で喫煙する人の割合は、平成24年度で26.9%でした。
また、ファイザー株式会社が平成28年に行った喫煙に関する実態調査では、喫煙者である新入社員・職員のうち、約8割が「勤務中にタバコ休憩をとる」と回答しています。1日あたりのタバコ休憩の回数は平均2.24回、1回あたりのタバコ休憩の時間は平均9.42分とのことです。
多くの喫煙者が毎日、勤務中に約20分のタバコ休憩をしている計算です。
 
◆喫煙トラブルを予防するために
職場での喫煙は、昔からよくトラブルの「火種」になってきました。
代表的なものが、「タバコ休憩は労働時間に含むのか」「タバコ休憩によって定時に業務が終わらなかったことで発生した残業にも、残業代は必要なのか」というものです。
特に最近では、「働き方改革」に伴う労働時間削減、労働生産性向上といった気運の高まりから、非喫煙社員が「タバコ休憩は不公平である」とはっきり声を挙げる傾向が顕著です。
他方、例えば運転中の長距離ドライバーのように、「業務上のストレス発散のためタバコが欠かせない」という社員もいるでしょう。
たかがタバコと軽視せず、自社の実態を把握したうえで、方針・対策を社員に明示することが、のちの無用なトラブル予防につながります。